「そもそもの評価ルールがおかしい?」「国の評価額でも売れない」…実勢価格との逆転現象に不満続出。最大93%OFFで叩き売りする制度矛盾

個人の土地相続などで、国が引き取った(相続土地国庫帰属制度で国庫に帰属した※個人側が負担金を支払う必要あり)土地の民間購入を促す新ルールの導入に関するニュースがネット上で議論を呼んでいます。
国側が引き取った土地の評価額をまず3割、それでも必要があれば3ヶ月ごとに1割ずつ減額し、最大93%(残り7%)まで下げて売却しやすくする内容」で、地方を中心に増える相続土地の活用を促す目的です。

1.ネット(特にX)での主なご意見

現在このニュースは日経新聞の投稿などで広く拡散され、多くの注目を集めています。
しかし、国民の意見は批判的・懐疑的なものが目立ち、以下のような声が多く出ています

「相続税で高く取っておいて、国が取ったら大幅に値下げするのはおかしい!」
「相続時に路線価で評価される税を支払う!国が取得した後に市場実勢に合わせて大きくディスカウントするのはおかしい!」

「地方の価値の低い土地(維持費がかかる負動産)が93%オフでも売れないなら本質的な価値はゼロ!」

「日本の土地が安い外国資本などに流出するリスク」
「大幅に値下げで買いやすくなり、特に海外資本に買われまくる」

「根本解決になっていない」「そもそも相続税が高すぎる」
「相続税評価と実勢価格の乖離、所有者不明の土地問題の根本原因に気づいていない。」

肯定的・中立的な意見は極めて少数で、全体として不満や疑問の声が強いです。

相続や贈与の際に土地を評価する場合は、国税庁が示す「財産評価基本通達」を使い(「相続税評価額」「財産評価額」)、
固定資産税や都市計画税は総務省の「固定資産評価基準」に基づいて評価されています(固定資産税評価額)。

これらの公的土地評価で求められた価格を基に税を支払った後、国が土地を引き取って、大幅に値下げして民間に売却する案――この方針が、税制度(評価制度)の考え方を問い直すきっかけになっています。

国が定めた評価額でも売れない(引き取ってくれない)土地なのに、なぜその高い評価額をベースに税金(固定資産税や相続税)を取られ続けなければならないのか?」という、制度の根幹を揺るがす問題です。

今回は、国が定める「評価ルールの矛盾」、そして「売れないなら税金を還付・返還すべきではないか?」という点について言及します。

2.現在の評価ルールとその逆転現象

相続や贈与で土地を評価する際は、国税庁が示す「財産評価基本通達」を使い、毎年納付しなければならない固定資産税は総務省が定める「固定資産評価基準」に基づいて評価するものとされています。

  • 相続(贈与)税の相続税評価:財産評価基本通達により、路線価(公示価格の約80%目安)などを基に算出。都市部では実勢価格に近いかそれよりやや低いケースが大半ですが、地方の低需要地では逆転現象も目立ちます。
  • 固定資産税の固定資産税評価:固定資産評価基準に基づき、公示価格の約70%目安で市町村が決定。基本的には3年ごとの評価替えで調整されますが、こちらも地方の低需要地や負動産では逆転現象も目立ちます。

本来、これらの評価額(各路線価)は「実際の市場価格(実勢価格≒公示価格)よりも少し低め(実勢の7〜8割程度)」になるように設定しているので、そもそも「実勢価格より低い水準なので問題ない」というのが国側の「建前」です。

しかし、地方の調整区域の土地や市街地にある山林、無道路地、別荘地などでは、この仕組み(評価ルール)がバグ(逆転現象)を起こすことがあります。
過疎化や需要の低下により、現実では実際の市場価値(実勢価格)が二束三文、あるいは「マイナス(お金を払ってでも手放したい)」になっているにもかかわらず、国の評価ルールは机上の基準を踏襲しているため、現実の価額まで下がらないことがよくあるのです。

ここが矛盾の核心です。

相続時や毎年の固定資産税納付に「高い」公的評価額(税務評価額)で税を払い、国が(※負担金をもらい)引き取った土地を、民間に売却する際に市場で売れないからといって大幅ディスカウントして売る

これは「税徴収のための公的評価(税務評価)が実勢価格より過大に見積もっていた」ことを国自身が認めることになります(理屈上は)。

3.ディスカウントするなら元の所有者に「税金を還付・返還すべき?」

「実勢価格のほうが遥かに低い(売れない)」ということは、
言い換えれば「国や自治体(行政)が実態以上の価値を勝手にでっち上げて、過大に課税してしまっている」ということです。

当然、多くの人から次のような意見が出るのは当たり前です。

「国が評価額をディスカウントした金額でしか市場で売却できないなら、それが適正な評価額ではないのか?」

高く評価された金額を基に課税された。払いすぎた固定資産税や相続税を還付(返還)するべきだ」

法律の原則(時価課税の原則)に照らし合わせれば、「時価(=実際に売れる金額)」を超えた評価額で課税することは、確かに不当である可能性があります。

評価ルールそのものが現代の日本の土地事情(負動産時代)に追いついておらず、おかしなことになっていると言わざるを得ません。

4.「物納」すればいいという大いなる勘違い

この「売れないのに評価額だけが高い土地」の話をすると、
決まって「じゃあ、その高い評価額のまま国に『物納(ぶつのう)』したり、
最近始まった『相続土地国庫帰属制度』で国に引き取ってもらえば、損しないでしょ?」と言う人がいます。

ですが、これは実務の現場を知らない人の致命的な勘違いです。国はそんなに甘くありません。

そもそも、この2つの制度は目的もルールも180度違います。

  • 物納とは: 相続税が払えない人が、税金の代わりに「土地の評価額で納付する」制度。国の評価額で引き取ってくれますが、手元に現金や預貯金が少しでも残っている場合は、そちらの納税が優先され、物納は認められません。さらに、買い手がつかないような地方の土地は、国から「受け取り却下」「門前払い」されます。
  • 相続土地国庫帰属制度とは: いらない土地を国に返す制度。ですが、国が引き取るどころか、こちらが国に「10年分の管理費(数十万円〜)」を前払いで納める必要(実質的な上納金)があります。もちろん、境界が曖昧な土地や古い建物が残っている土地は一切引き取ってくれません。

つまり、世の中には「市場では1円でも売れない」「国も物納や国庫帰属を拒否する」のに、「役所の机の上の計算(評価額)だけは一丁前に高い」という、地獄のような膠着状態に陥った土地が溢れかえっているのです。

5.日本社会の「見て見ぬふり」にNOを突きつける

  1. 評価と実勢価格の連動強化:定期的に実勢価格データを反映した評価基準の見直し。
  2. 税負担の是正メカニズム:大幅値下げ売却が発生した場合の還付制度や評価訂正の道筋。
  3. 所有者不明土地対策全体の見直し:相続登記義務化だけでなく、税制・評価制度の整合性を優先。

国や行政は立派に見えるルールを作りますが、そのルールが現実と乖離して国民が苦しんでいても、組織として「見て見ぬふり」を決め込むことが多々あります。

ネット社会による情報拡大も相俟って、「評価ルールや税制度がおかしい」と気づいた人たちや、実際に過大評価によって損をしている不動産オーナーさんたちは、今や黙って従うだけの存在ではありません。

今後は、実勢価格との乖離を証拠として突きつけ、減額請求や不服申立てを行う動きがさらに活発化していくものと考えています。

ただ、評価額の適正性について、不動産鑑定士による「鑑定評価額」で対抗する手段もありますが、種々の事情により審判所及び裁判所において納税者側が勝つことは難しいのが現状です。