地方自治体の「固定資産税評価」のバラつきが、相続時の不公平を生む可能性
目次
1.なぜ固定資産税の評価が、相続税の不公平につながるのか?
「住んでいる自治体によって、相続税(贈与税)
の負担が変わるかもしれない」
そう言われたら、多くの人は「そんな馬鹿な…」と思うでしょう。
日本全国どこにいても、国税である相続税(贈与税)の計算ルールは一律であるべきだからです。
しかし、ここに盲点があります。
相続税(贈与税)を計算する際、ベースとなる「相続税評価(財産評価)」は、各自治体(市区町村)が独自に算出する固定資産税評価額に依存していることが往々にしてあります。もし、この固定資産税評価額の評価方法や運用の精度が自治体ごとに異なれば、結果として国税である相続税や贈与税の税額にも不公平な取扱いが生じることになるのです。
2.固定資産税評価と相続税評価の「密接すぎる関係」
まず、国税が課せられる相続税評価において、固定資産税評価がどれほど重要な役割を果たしているか整理しておきましょう。
- 家屋(建物)の評価: 自分で使用している家屋の相続税評価額は、原則として「固定資産税評価額 × 1.0」です。つまり、自治体が決めた評価額が、100%そのまま相続税の評価額になります。アパートやマンションなどの貸している家屋は借家権割合などを控除したりしますが、ベースは「固定資産税評価額」です。
- 土地(倍率地域)の評価: 市街化が緩やかな地域の「倍率地域(路線価が設定されていない地域)」では、土地(宅地のほか、農地や山林など)の相続税評価額は「固定資産税評価額 × 国税局で定められた倍率」で計算します。ここでも固定資産税評価額が計算の主軸です。
このように、日本の相続税評価制度の半分以上は、自治体が汗をかいて計算した固定資産税評価に「タダ乗り」する形で成り立っています。
3.なぜ自治体間で固定資産税評価の格差が生まれるのか
各地域間で「地価」の格差があるのは当たり前といえば当たり前で、この点については多くの人が許容するでしょう。
しかし、
総務省が定める「固定資産評価基準」という全国共通のルールはあるものの、実際の運用現場では、自治体ごとに以下のような「格差(ブレ)」が生じています。
- 職員の専門性とマンパワーの差: 大都市圏の自治体には資産評価の専門部署やベテラン職員が配置されやすい一方、規模の小さな自治体では数年で異動する一般職が評価しているケースが少なくありません。
- 画地調整の解釈のブレ: 崖地、無道路地、不整形な土地などをどう評価するかは、現場の担当者の裁量や各地域それぞれの「評価要領(評価基準をさらに具体化したもの)」に左右される部分が残っています。
- 非木造建物の「再建築評点」の複雑さ: マンションやビルなどの評価は極めて複雑です。図面の読み込みや資材の判定に 現場の熟練度が求められるため、自治体によって評価額の精度に明確な差が出やすいのが実態です。
4.同じ市場価値の資産なのに、納税額が変わる理不尽
こうした自治体ごとの運用の違いは、単に「固定資産税や相続税が数十円、数百円ズレる」という話では収まりません。
【例】 本来の市場価値が全く同じ「時価4,000万円の土地」(同一路線価、同一形状)があったとします。
- A市の要領で評価された場合: 固定資産評価額が3,000万円 ⇒ 相続税評価額 3,300万円(倍率1.1)
- B市の要領で評価された場合: 固定資産評価額が3,500万円 ⇒ 相続税評価額 3,850万円(倍率1.1)
この結果、B市に不動産を持つ土地所有者は「500万円分高く」固定資産税が課され、相続時のB市遺族はA市の遺族よりも「550万円分高いベース」で相続税を課されることになります。
国税庁の通達によって一見、全国一律に公平に保たれているように見える相続税ですが、その土台(固定資産評価額)が公平でなければ、上物(相続税評価額)の公平性など保てるはずがないのです。
5.提言:今求められる「自治体間の均衡化」と「国税と地方税の連携」
資産税の不公平を解消するためには、以下の対策が急務です。
- 自治体向け評価マニュアルの標準化・AI化: 担当者の熟練度や主観に依存しない、客観的な評価プロセスの確立。要領の均衡化。
- 納税者側の防衛意識: 「役所が決めたから正しい」と思い込まず、不自然に高いと感じたら適正性を検証する姿勢。
- 財産評価額(相続税評価額)と固定資産税評価額の適正化・均衡化
とまぁ、理想的な均衡化論を主張しましたが、そんなこと気にしていない人の方が大多数なので当分はルールの均衡化なんて現実的には「無理」だろうなと思います。
ただ、筆者はおかしいものはおかしいと言わずにはいられないので、ご勘弁ください。

