【不動産裏話】マイホームの購入価格は業界に筒抜け?レインズと買主のプライバシー問題

「マイホームをいくらで買ったか、他人に知られたくない……」

不動産を購入するとき、このように考えるのはごく自然なことです。
しかし、日本の不動産業界には、あなたの「買い値」が全国の不動産業者(約14万事業者、約130万人前後の就業者数)に筒抜けになってしまう仕組みが存在します。

それが「レインズ(指定流通機構)の成約事例」です

売主側からすれば「もう売れた後の「過去の」情報」ですが、これから新しい生活を始める買主側からすれば、極めてプライベートな経済情報ですよね。

これって買主のプライバシー意識が低すぎない?
どうにかして載せない方法はないの?

今回は、業界のタブー(?)とも言える「買主側のプライバシー置き去り問題」について解説します。

1.不動産業界の建前と現場のリアル

不動産業界やレインズ(不動産流通機構)側の言い分としては、「個人情報には十分配慮している」という建前があります。

  • 売主や買主の氏名、住所、連絡先等は載っていない(物件概要、面積、成約価格、成約時期等の把握は可能)
  • 情報を確認できるのは業界団体に加入している「不動産業者のみ」

「これ単体では特定の個人を識別できないから、個人情報保護法上も問題ない」というのが業界での法律上の解釈です。

しかし、取引に関与していなくても他の不動産業者がその事例データを見れば、簡単に物件を特定することができ、法務局登記情報提供サービスで「登記簿謄本」を取得することで
・売主の氏名、住所
・買主の氏名、住所(前又は現住所)
・買主が「どこの銀行からいくら借りたか(抵当権)
まで筒抜けになり、

事実上、「あなたがいくらで資産を購入したか」が、「面識もないすべての不動産業者」が知ることが出来るのが現実です(実際の成約価格はレインズにて把握できます)。

2.なぜ買主のプライバシーは置き去りなのか?

原因は、不動産売買における「同意の取り方」の非対称性にあります。

立ち位置同意の実態
売主専任媒介契約の場合、レインズへの登録・成約報告は業法上の義務
売却活動のメリットもあるため納得しやすい。
買主明確な説明を受けているケースはほぼ皆無。媒介契約書に記載があまりない
中小の不動産業者の場合、買主側とは媒介契約書すら締結していない場合もよくある

売主は売ったらそこで「終わり」ですが、買主はそこから新しい生活が「始まり」ます。
市場の「透明性」や「相場の把握」「取引の円滑化」という大義名分の裏で、買主のプライバシーがトレードオフになっているのが今のシステムです。

3.買主の「レインズに載せないで!」は通用するのか?

もし、一般消費者が購入時に「自分の成約価格をレインズに載せないでほしい」と強く要望した場合、拒否することはできるのでしょうか?

結論から言うと、「売主側が結んでいる契約の形」によって結果は180度(いや90度くらいでしょうか…)変わります。

① 売主側が「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の場合 ⇒  拒否できない

売主側の不動産業者が「専任媒介」または「専属専任媒介」で物件を預かっている場合、宅建業法(第34条の2第7項)により、契約が成立したら「遅滞なくレインズに成約報告をしなければならない」と義務付けられています。

これは法律(強行法規)であるため、買主側がいくら「載せないで」と特約を希望しても、業者も法律の壁に阻まれて拒否することはできません。

② 売主側が「一般媒介契約」などの場合 ⇒  阻止できる可能性がある…でも

売主側が「一般媒介」の場合や、売主が不動産会社自身(売主物件)である場合は、レインズへの物件登録も成約報告も法律上の義務ではありません。
そもそも情報自体がレインズに上がっていない場合もありますし、契約前にしっかり交渉すれば成約事例としての登録を避けてもらえる可能性が少しあります。

※しかし、良い物件ほど不動産業者は「専任媒介」「専属専任媒介」契約を締結し、自社で広告を打ち自力で買主様を見つけることができれば「両手取引」が可能になるため、一般媒介契約で売り物件を預かっていることはあまりありません。

4.知っておくべきもう一つの壁「不動産登記」

「じゃあ、一般媒介の物件だけを狙えばプライバシーは守れるの?」と思われるかもしれません。
しかし、ここにもう一つの大きな壁が存在します。

それが「不動産登記」の仕組みです。

隠し通すことはできない日本の不動産仕組み
仮にレインズへの掲載を完璧にブロックできたとしても、日本で不動産を購入すると、法務局の「不動産登記簿」に新しい所有者としてあなたの氏名と住所が公に登録されます(登録しなければなりません)。
そして、この登記情報は「誰でも・合法的に」閲覧・取得ができるものです。
地域の不動産業者やリフォーム会社などは、この登記情報なども定期的にチェックして営業活動を行っています。


つまり、レインズでの成約価格登録を止めたとしても、日本国内の法律の仕組み上、「誰がどこをいくらくらい(融資額から類推)で買ったか」を完全に隠し通すことは現実的ではないのです(※通常不動産は高額なため融資を受けて購入しますが、仮に手持ち現金のみの決済だった場合は例外です)。

5.購入前に心構えを持っておきましょう

現在の不動産流通システムは、過去の「不透明な囲い込み」や「不当な価格吊り上げ」から消費者を守るために作られました。
その結果、市場の健全化と引き換えに、買主側のプライバシーが少し窮屈(?)な状態になっているのが現状です。
ただ、上記を「そういう仕組みなんだ」とあらかじめ理解しておくことで、契約時や購入後の無用なトラブルや不安を減らすことができます。
レインズに掲載された物件の成約価格情報は、不動産業者であれば知ることができますが、不動産業者以外の第三者には知られることはない(※情報漏洩しない限り)のでその点はご安心ください。


あと、取引価格を「教えろ~」と言ってくる業界・団体としては、宅建業界とは別に国土交通省:土地鑑定委員会(不動産鑑定業界)がありますが、こちらは引っ越されてからある程度期間が経ってから郵送されてくる「アンケート」になります。回答は「任意」ですがこれも色々と裏話がありますので、よければこちらの記事をどうぞ。

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