課税面積5%の1都3県で税収が全体の44%?富の偏在が「安全保障」「経済」「政治」を揺るがす可能性
不動産実務や税務に携わる方であれば、日々の実務の中で「都市部と地方の圧倒的な地価格差」を肌感で感じておられることと思います。
これをマクロな固定資産税の税収データとして俯瞰すると、改めて日本の富の一極集中と地方財政の構造的課題が浮き彫りになります。
総務省の『固定資産の価格等の概要調書』等のデータによると、東京・神奈川・千葉・埼玉の「1都3県」が占める課税対象の土地面積は、全国のわずか5%程度。
しかし、そこから得られる固定資産(土地)の税収は、全国の約43〜44%にのぼるという事実があります。


富と税収の極端な一極集中が、日本の存立にどのようなリスクや・構造的影響を与えているのか?
3つの角度から、少し簡単に考えてみたいと思います。
目次
1.【安全保障】一極集中がもたらす国土の致命的な脆弱性
地政学や安全保障的な観点からいえば、富とインフラの過度な集中は「最大の脆弱性(単一障害点:シングル・ポイント・オブ・フェイラー)」を意味します。
単一障害点(SPOF)とは
その箇所が停止するとシステムの全体が停止するような箇所。システムの弱点。
- 大規模災害時の「国難」リスク
「首都直下地震」や「南海トラフ巨大地震」が発生した場合、国家の固定資産(経済基盤)の4割以上が集中するエリアが直接被災することになります。
これは単なる地方都市の被災とは比較にならないほど、国税(法人税・所得税)のみならず、地方税(固定資産税・住民税)の財源が一瞬にして喪失・毀損することを意味し、国家全体の財政機能が麻痺し、言葉のとおり「国家存立の危機」へと直結します。 - 国土の空洞化→安全保障上のリスク
税収が上がらない地方自治体は、独自の財政力でインフラ(道路、橋梁、河川、堤防など)を維持できなくなります。
また、管理放棄された土地の増大は、災害時の復旧を阻むだけでなく、国境離島や防衛施設周辺、水源地といった安全保障上重要な土地が外資や不透明な資本に買い占められるリスクを急激に高めています。
つまり、財政基盤の脆弱化は、実質的な主権管理の原資を失うことと同義となります。
2.【経済】富の自己増殖ループ
固定資産税は、得られた税収がその地域のインフラや行政サービスとして再投資される「受益と負担」の原則に基づきます。
この仕組みが、都市部において自己増殖ループを生み出しています。
巨額の固定資産税収(例:1都3県)
↓
手厚い都市インフラ整備・再開発(容積率の緩和措置など)・住民サービスなど
↓
さらなる企業・人口の流入(一極集中の加速)
↓
地価のさらなる高騰、 固定資産税収のさらなる拡大
このループの裏で、地方は投資原資を奪われ、経済的魅力が低下する一方です。
結果として、日本全体で見ると「都心の極狭な空間に対する過剰投資」と「地方への過少投資」という、非効率な資本(資源)分配が行われており、これが日本経済全体の潜在成長率を押し下げている可能性(収穫逓減・限界生産力逓減の可能性)があります。
3.【政治】地方分権形骸化と中央集権構造への逆戻り
政治(ガバナンス)の観点において、税収の偏在は「地方自治」という民主主義の基盤を揺るがしかねません。
- 「財政的自立」の喪失と「官僚体制」の強化
固定資産税は、使途に制限のない「地方共通の基幹税」であり、地方分権の象徴です。
しかし、都市圏以外の地方は満足な税収を上げられないため、国からの「地方交付税交付金」や「国庫支出金」に依存せざるを得ません。
結果として、政治的権限を地方に移譲しようとしても、財源の紐を握る中央省庁(国)に対する地方自治体の従属関係が強まり、実質的な中央集権体制が温存・強化されることになります。 - 一票の格差と政治の歪み
経済・税収の集中に伴い、人口も東京圏(1都3県)へ集中します。
これにより選挙区の定数是正が繰り返され、国政における都市部選出議員の割合が増加します。
結果として、国の政策方針や予算配分が「都市部の有権者ファースト」に傾きやすく、安全保障上不可欠な「地方の国土強靭化」や「第一次産業の保護&育成」といった長期的・国家的な投資判断が後回しにされるという政治的歪みを生み出す可能性があります。
4.個人ができる具体的なアクション
税収の偏在や一極集中という「国家レベルの巨大な歪み」を前にすると、一個人は無力に思えるかもしれません。
しかし、個人が今日から中長期的に実践できる具体的なアクションを4つ整理しました。
4-1.「生活圏の地域分散」と「関係自治体への投資」
すべてを都心に集中させるのではなく、「地方へ分散させる」は個人レベルでもすることができます。
- 「二拠点生活(デュアルライフ)」や「地方での副業・ビジネス」
完全に移住や引越しなどしなくても、週末だけ地方で過ごす。あるいは地方の空き家を安く借りて(または買って)複数の拠点を持つ。
これによって、地方での消費や固定資産税の納税を通じて、微力ながら地方財政に直接貢献することができます。 - 「ふるさと納税」の戦略的活用
ふるさと納税は、都市部に集中するはずだった「住民税」を地方に還流させる、一般人に許された最も強力なツールです。
ただの返礼品目当てだけでなく、「自分が応援したい、インフラを維持してほしい(消えてほしくない)地方自治体」へ明確な意思を持って寄付することは、税収偏在への直接的なカウンターになります。
4-2.実家の「負動産化」を防ぐ
地方に実家や土地がある場合、それを放置して「所有者不明土地」や「管理不全土地」にしないことが、日本の安全保障と地方自治を救う地道な貢献です。
- 「相続登記」の義務化への対応
2024年から相続登記が義務化されました。
地方の、価値が低いと思われる土地であっても、自分が生きているうちに境界等を明確にし、相続の整理をしておくこと。
これにより、地方自治体が「誰から固定資産税を徴収すればいいか分からない」という事態を防ぎ、また、土地の流動化(売却や譲渡)の道を残すことができます。 - 「相続土地国庫帰属制度」などの活用
どうしても引き取り手のない地方の土地は、国に返す(国庫に帰属させる)手続きを検討するなど、次世代に負の遺産を引継がないための「土地の終活」を一般人が行うことは、国土の荒廃を防ぐ上でも重要です。
4-3.政治への関心を持つ
税制や一極集中の是正は、最終的には政治の仕事ですが、有権者として少しでも政治に関心を持つことで1票の使い方(投票先)を変えることができます。
- 「東京一極集中の是正」を掲げる政策へのコミット
選挙の際、目先の給付金だけでなく、「(建前でない)地方創生」「国土強靭化」「首都機能分散(副首都構想)」「地方への減税措置」「地方の規制緩和」といった、日本の構造改革を本気で考えているのは誰か?を調べることです。 - 都市部での「インフラ過剰投資」への疑問を持つ
都市部で、さらなる再開発や大規模なハコモノ行政が行われる際、「本当にこれ以上の集中が必要なのか?」「地方のインフラが崩壊している中で、今ここに税金を使うべきなのか?」という視点を持つ有権者が増えること自体が、政治を動かすプレッシャーになります。
5.まとめ
筆者的には、一極集中や富の偏在は長期的にみれば、日本の存立を脅かす可能性のほうが高いと考えています(「選択と集中」で東京一極集中はOK!みたいな方もいますが……)。
どっちがいいかは確かに誰にも分かりませんが、個人の日々の「選択」の積み重ねこそが、日本の将来を決める一歩となります。
※この「地方の土地の価値崩壊と税収の枯渇」は、すでに私たちの足元で非常に不気味な現実として進行しています。
[実例コラム]競売に流れた寺院と、山中に現れた某宗教系「土葬墓地」
地元の山中に、近年になって突如として現れた「某宗教系の土葬墓地」があります。かつてはごく普通の日本人向けの仏教系墓地でした。
気になってその土地の登記を遡って調査したところ、 本来、その墓地を所有していたのは由緒あるお寺(宗教法人)だったのですが、過疎化と檀家減少の波に耐えきれず、過去にそのお寺自体が「競売」にかけられていたのです。
その寺院が所有・管理していた墓地を、別の宗教団体(※法人じゃないのに登記されていて?となっています)が買い取り、結果として合法的に「土葬墓地」へと用途を変えて運用しているようです。
新規での設置が極めて難しい「墓地(特に土葬)」であっても、過去に許可を得ていた古いお寺の墓地(既得権)を買い取るという手法を使えば、外から来た不透明な資本や独自の思想を持つ団体が、合法的に地方の土地を意図通りに変質させることが可能になるのです……。

