代償分割の不動産価格は結局どう決める?相続で揉めないための「適正価格」の考え方

大相続時代(団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年~が幕開け)がすでに到来していますが、
相続で最も揉めやすい・考えなければならない複雑な問題の種は何かご存知でしょうか。

それは、「不動産」です。

例えば、既に夫に先立たれている妻が亡くなった場合、
・兄が実家(不動産)を相続し、
・妹は現金を相続する。
という話し合いがなされることがあります。

しかしながら、ほとんどの場合は「不動産の金額 ≠ 現預金の金額」となってしまうため、各人が公平に相続できるよう「代償分割」という手法がとられることがあります(以下、前提知識として代償分割についてある程度理解している方を対象とします)。

そしてここで、多くの方がこの疑問に直面するはずです。

結局……不動産の価格は、いくらで計算すればいいの?

実は、この問いには「唯一の正解」があるわけではありません。

強いて言う、
利害関係者同士が揉めずに「全員が納得する公平な価格」です。
※自分の経済合理性のみを考えるなら、代償金を支払う側は不動産価格は「安く」、代償金を受け取る側は不動産価格は「高く」が各人のメリットがある価格になります

1.不動産には概ね「4つの価格」があります

  1. 実勢価格(取引価格)
    実際に市場で売買されている、若しくは売買されるであろう価格です。最も現実の価格に近いと考えられている価格です。ただし、景気動向や買い手の有無、売主の事情、不動産自体の希少性や地域性によって敏感に変動します。
  2. 公示価格(基準価格)
    国が毎年公表している標準的な土地価格です。売買価格の参考になりますが、地域の代表地点の価格であるため、各人が相続&所有する不動産価格に直接適用できるかは十分注意する必要があります。
  3. 相続税評価額(路線価)
    相続税や贈与税を計算するための価格です。土地は一般的に時価の約80%になるよう設定されていますが、8割で割戻したとしても全国どこでも必ずしも実勢価格と一致するわけではなく、地域や個別事情によって実勢価格と乖離が出ることも多いです。
  4. 固定資産税評価額
    市町村や都道府県が、固定資産税や不動産取得税を計算するための価格です。土地は一般的に時価の約70%になるよう設定されています。こちらも、7割で割戻したとしてもすべてが実勢価格と一致するわけではありません。
    建物については、この価格を代償分割の基準として利用されることも少なくありません。

2.結局どれを使えばいいの?

実は、法律で「この価格を使いなさい」と決まっているわけではありません。

一番大切なのは……

当事者全員が納得できること

①市場価格を知りたい

この場合は、地域に精通した不動産会社(※できれば2~3社)へ「無料査定」を依頼し、査定書をいただきます。
複数社に依頼し比較することで相場感が見えやすくなります。平均値を採用する価格のもありです。

しかしながら、不動産会社の無料査定はその後の売買仲介につなげることを目的としている場合が多く、査定だけで売却予定がないことを正直に話すと取り合ってくれないところも多く、受けていただいたとしても有償での査定書発行はできない1とされているため、査定自体の精度に懸念があり、事情を隠して依頼した場合には媒介依頼を受任するために

高い査定額を提示されたり、その後の営業電話等がひっきりなしにかかってくる可能性もあります。

  1. 不動産の鑑定評価に関する法律(昭和三十八年法律第百五十二号) ↩︎

「土地」については、以下のような方法でご自身である程度相場感を把握することも可能です。

②費用をかけずある程度客観性がほしい

税理士事務所に相続税申告を代理で依頼している場合などに比較的多い方法です。

  • 土地:「 相続税評価額 ÷ 0.8 」(多)or 「 固定資産税評価額 ÷ 0.7 」(少)
  • 建物:「 固定資産税評価額 」

これは実務でも一つの目安として用いられる考え方ではありますが、上記のとおり実勢価格と必ずしも一致するとは限りません。
建物については固定資産税評価額そのままということもありますし…

③費用はかかってもいいが公平にしたい

「不動産鑑定士による価格評価」の依頼で評価額を出してもらうのが、もう一つの中立公平な解決案にはなります。
鑑定士による「鑑定評価」は少なくとも20万円前後~しますが、「価格調査」「簡易鑑定」と呼ばれるような簡易的なもので十分です。
より客観的な評価という形をとるのであれば「鑑定評価」になりますが、訴訟用や税務署提出など公的要素がある程度入ってこない限りオーバースペックであると個人的に考えています。

一つ注意点としては、当事者それぞれが別々の鑑定士に依頼してしまうと、その分費用負担が増えることに加え、それぞれの依頼者の意向に沿った価額に寄せてしまえる可能性もあり(建前上は中立公正を職責としていますが、依頼者から報酬を支払っていただくことになる以上…)、さらに揉める火種にもなってしまうので、中立公平さを最優先にするのであれば、費用折半で中立公正を旨としている鑑定士1事業者のみに依頼するのがおすすめです。

まとめ

代償分割で一番重要なのは、「正解の価格」を探すことではありません。

「当事者全員が納得できる価格」を見つけることです。価格の決め方には、

  • 実勢価格(①不動産業者の無料査定②鑑定士による評価)
  • 公示価格
  • 相続税評価額ベース
  • 固定資産税評価額ベース

など様々な方法があります。

「費用」を抑えることを優先するのか、「公平性」を重視するのかによって最適な方法は変わります。

相続は一度揉めると、家族関係にも大きな影響を与えかねません。
不動産の価格に迷ったときは、不動産業者や税理士・不動産鑑定士などの各専門家に相談し、相続人全員が納得できる基準で進めることが、円満な解決への道筋といえるでしょう。