はっきり言って、誰も「中古建物の価格」は分かっていません

1.不動産(土地)価格は「分かる」が、建物価格は「あまり分からない」

不動産には価格がある。

売ったり買ったりするときには、不動産のポータルサイトを見たり、不動産屋に査定してもらう人も多いでしょう。

だから不動産の価格は「分かる」と思われている。

しかし厳密に言えば、それは土地価格(+新築建物価格)の話である。

中古建物の価値については、実は誰も明確かつ客観的な普遍的基準を持っていない。

所得税&法人税、相続税&固定資産税等、不動産取引の現場、金融機関、不動産鑑定士等々。
それぞれが異なるルールや物差しで建物を評価して(見て)いる。

※耐用年数前後、又は耐用年数超の建物を想定した記事です。

そしてその結果、奇妙奇天烈な現象が起きる。

  • 所得税&法人税法上は「価値ほぼゼロ」(備忘価額1円、※例外あり10%等)
  • 相続・贈与税、固定資産税、不動産取得税等では「20%価値が残り続ける」
  • 不動産取引市場では所得税等の法定耐用年数超えは多くが「解体前提」→「0円」or「解体費マイナス」、耐用年数前後であれば数百万円残る場合あり
  • 金融機関の担保評価は保守的なため、法定耐用年数で見ることが多いが、鑑定士基準の経済的耐用年数で見る場合も。
  • 不動産価額の専門家である不動産鑑定士は、法定耐用年数よりちょっと長い程度の「経済的耐用年数」(※実はエイヤ(主観)…)、取り壊し最有効と(主観)判断すれば解体費マイナス

つまり、制度や見る人の立場によって建物の価値が「バラバラ」なのである。

2 .所得&法人:建物の価値は「ほぼゼロ」になる

所得税や法人税では、建物は年々ルール通りに減価償却される。

例えば木造住宅なら法定耐用年数は22年。

その期間を過ぎれば帳簿上は備忘価額1円まで償却される。(※取得年度による例外はある)

つまり税務の世界では、

ルール上の年数を超えたらほぼ「ゼロ」という扱いになる。

しかしこれは実際の使用価値とは関係がない。
法定耐用年数を超えても普通に住める住宅は大量にあるし、昭和に建築された建物も今なお大量に存在している。

神社仏閣なんて数百年残っている。

3 .固定資産税&相続税など:建物は20%の価値が残り続ける

一方、固定資産税や相続税では考え方が異なる。

建物はどれだけ築年数が経っても再建築費の20%程度まで価値が残るとされる。

つまり、築40年、築50年、築100年経っても、固定資産税評価額はゼロにならない。
確かにまだ使える状態の建物であれば価値が残るのは理解できる。

しかし、その結果どうなるか。

極めてボロボロの建物、誰も使わないような建物でも価値はあるとされ、税金は課され続ける。

4 不動産取引市場:建物価格は千差万別、十人十色

実際の査定では、

  • 過去の取引事例、周辺の売出事例、建物の印象、リフォーム履歴、売却のしやすさ

といった要素をもとに、個々の不動産会社や査定担当者の経験的・主観的な判断によって価格が決められることが多い。

その結果、同じ建物であっても

  • ある会社では「建物価値200万円」
  • 別の会社では「建物価値0円」
  • さらに別の会社では「建物解体費分マイナス」

といった査定の差が生じることも珍しくはない。

つまり中古建物の価格は、厳密な意味での「評価額」ではなく、その人が市場で売れると考える金額の推定に近いのである。

5.金融機関:耐用年数が終われば担保価値なし

金融機関が融資をする際の担保評価は所得税や法人税の場合に似ている。

多くの金融機関では法定耐用年数を一定の基準にする。耐用年数を超えた建物は

  • 担保評価(価値)ゼロ

になることもある。

しかし現実には、築40年の住宅に住んでいる人や、築50年の店舗や事務所として使用している人存在する。

したがって、金融機関によっては後述の「経済的耐用年数」を勘案することもある。

6 .不動産鑑定:最有効使用と経済的耐用年数という曖昧な概念

不動産鑑定では経済的耐用年数最有効使用という概念が使われている。

経済的耐用年数は、不動産が市場で経済的価値を持つと見込まれる年数のことを言い、建物の劣化の程度や修繕等の状況を加味したうえで、建築士の意見などたまに聞いて不動産鑑定士が判断していることが多い。

しかしこれは、明確な客観データがあるわけでもなく、実務者の経験と予想に依存する部分が大きく、実のところ

ほとんど「推測」=「エイヤ」で決められている。

そして最有効使用とは、ある不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用方法をいう。

最有効使用には、大きく分けて①現況継続②用途変更・増改築③取り壊しがあるが、実際のところ「山勘」であると思っている。

「①~③のパターンでシュミレーションしてみたんですか?」と一度聞いてみるといい、、、(笑)

最高最善の使用価値が仮に判定できるなら、空き家問題はここまで深刻化していないだろうし、鑑定士の大半が不動産投資で財をなしていないと理屈的に不自然である。

不動産鑑定士は土地価格には詳しいが建物に関しては実際よく分かっていない人の方が多数で、建物の価値判断スキルは不動産会社勤務の不動産営業マンや不動産投資家と大差ないかと、、、

7.本当の建物の価値(価格)とは

建物の価値(価格)は

  • 構造や使用可能用途
  • 維持管理状態
  • 修繕履歴
  • 耐震状況
  • 経過年数、今後の利用可能年数

などによって決まるのは、多くの人が理解している。

が、

中古建物の価値(価格)判断要因について、「理解はできる」が実のところ「誰も分かっていない」。と筆者は感じている(※もちろん筆者も)。