寝屋川市「空き家税」の問題 「居住促進」か「ただの増税」か

2026年7月9日、大阪府寝屋川市議会で「空き家流通促進税」(通称:空き家税)の条例が全会一致で可決されました。
市内全域を対象とする全国初の試みとして、全国の注目を集めています。

市は「空き家の物件活用と居住促進のため」と説明します…

しかし、税収見込みばかりが強調され、具体的な効果目標(KPI・KGI)がほとんど説明されていない現実に、

結局は財源確保のための増税ではないか?」という疑念が広がっています。

本格導入まであと2〜3年(※総務省の同意が必要なため2029年~)…
空き家所有者として、空き家所有予備軍として、寝屋川市民だけでなく、他自治体の市民も「明日は我が身」として対岸の火事ではなく、今のうちにしっかり考えておくべきであると筆者は思います。

1.制度の概要と負担見込みの実態

対象となるのは、市内の「住宅のうち、現に人が居住していない状態にあると認められる『空き家』」です(空き家の定義についてまだ曖昧さが残っていると指摘している一般社団法人空き家管理士協会代表理事:山下裕二氏の記事もぜひご一読ください)。


総務省の2023年調査では寝屋川市の空き家は約1万5,450戸
このうち賃貸・売却予定のない約6,400戸が課税対象になると見込まれています。

税額は固定資産税(家屋分+土地の家屋相当分)に対し35%上乗せ
木造2階建ての典型的な戸建てで年間約2万4,800円、マンションの一室では3万円を超えるケースもあります。
固定資産税と合わせると、所有者にとって無視できない追加負担です。

税収見込みは年間約1.4億円

このお金は空き家対策に充てるとされていますが、「税収確保が目的ではない」と市長が強調する割に、税収試算ばかりが前面に出ている点は違和感を覚えます。所有者の行動を変え、本当に若い世代の居住を促進する気があるなら、もっと具体的な『成果目標』を最初に示すべきではないでしょうか?

2.目的と手段がミスマッチの可能性?

寝屋川市は大阪の典型的なベッドタウンです。
高齢化が進み、空き家も増加傾向にあります。火災リスクや景観悪化、防犯上の懸念は確かにあるでしょう。

しかし、税をかけさえすれば空き家問題が解決するわけではありません。
最大の問題は効果検証の枠組みが曖昧なことです。
市はすでに2020年から「寝屋川空き家流通推進プラットフォーム」(専門家による相談支援)を実施していますが、累計同意件数は約100件程度と、まだまだインパクトに欠けます。


税導入後も「対象空き家が何割減少」「新規居住世帯が何世帯増加」といった明確なKPI(重要業績評価指標)が公表されていないのも大きな問題です。
数年後に「税収は予定通り集まりました。でも空き家はあまり減りませんでした」では、単なる「隠れ増税」と批判されても仕方ありません。

特に厳しいのは年金生活の高齢者・現役世代の相続人です。親から引き継いだ実家をどうしていいかわからず、放置せざるを得ないケースは少なくありません。
そんな所有者に追加負担を強いるのは、「ちゃんと使え&管理しろ」と言いながら「早く手放せ」と圧力をかけるようなもの。
需要がなければ売却も賃貸も進まず、結果的に税だけ払い続ける「罰金・増税体質」になるリスクは否定できません。

3.所有者目線での現実的アドバイス

空き家を所有若しくは近い将来所有する見込みのある方は、2029年度課税開始までの猶予期間を最大限に活用してください。

1. 今すぐ状況を確認する

  • 水道使用量、住民票、現地状況から「空き家認定」される可能性を確認(判断が難しい時は行政に対しても確認・記録に残す)。
  • 固定資産税通知書で現在の税額を把握し、計算式に則った35%上乗せ後の負担を試算

2. 早めの行動を常に考える

  • 売却・賃貸を検討:プラットフォームに相談すれば専門家が無料・低コストでサポート。1年以内に募集を開始すれば免除対象になる可能性大
  • 解体を検討:除却補助金などを利用。解体後は更地として売却しやすくなる
  • 市に相談:転勤・介護など個別事情があれば免除・猶予の対象になる場合あり。早めにご相談を

3. 「難しいからよく分からないので『放置』」は最悪の選択
特定空家に指定されれば「固定資産税が最大6倍になるリスク」などのニュースを見たことがある人もいるでしょう(※厳密には6倍もいかないのですが…)。


税を払い続けるより、多少赤字でも動いた方が長期的に得になるケースも多くなる可能性があります。
所有者にとって「自分の財産に税をかけられる」のは理不尽に感じるでしょう。
しかし、放置すれば近隣住民や地域全体に迷惑がかかるのも事実。不動産は「自分の家(財産)」であると同時に「地域の資産」という公共の福祉という側面も実は高いのです。

4.今後の展望と市民に求められるものは…

空き家税は全国的な潮流になりつつあります。
京都市も類似の税を計画中ですが、対象を市街化区域に限定するなど、寝屋川市よりやや慎重です。

全市域対象という寝屋川市の強引さは、ベッドタウン特有の住宅需要を背景にしたものですが、行き過ぎた負担増にならないか注視する必要があります。

真の成功は「税収が1.4億円集まった=税収が上がった」ことではなく、空き家が有効活用され、若い家族が住みやすい街になったかどうかです。

導入後3〜5年で効果がなければ、条例の見直しや廃止を求める声が上がるはずです。
市民・所有者としては、議会を通じて「定期的な成果報告」と「負担軽減策の拡充」を求めていくべきでしょう。
税という強制・罰則的な力だけに頼るのではなく、リノベーション補助や移住促進策との組み合わせで本気で取り組んでほしいものです。

空き家問題は日本全体の課題です。
寝屋川市や京都市の取り組みが「失敗例」にならないことを願いつつ、引き続き注視すべき社会課題であると考えます。

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