【裁決事例分析/AI版】鑑定評価が認められないのはなぜ?

以前『【裁決事例分析】鑑定評価が認められないのはなぜ?』(※本記事と区別するため改題)という表題のコラム記事を書きましたが、せっかく裁決要旨をデータ化したのだから、人力で読解するのではなく、AIに読み込ませて分析すれば良かったのではないか?と思い、「裁決事例分析・AI版」として、「自身」の見方と「AI」の見方に齟齬がないか検証してみました。

(※国税不服審判所の裁決要旨検索システムにて、「鑑定評価」のワードで検索&整理したcsvデータです。)

田中

認容、棄却の割合や確率はどの程度?

田中

鑑定評価が認められない場合にはどういう理由が多い?

※使用AIは「NotebookLM」です。

1. 鑑定評価が認められる割合と傾向

ご提示いただいた裁決事例の集計結果に基づくと、請求人が提出した鑑定評価が認容される割合や確率は、以下のように推測できます。

1-1. 裁決結果の全体的な割合

裁決結果を分類すると、以下の通りの傾向が見て取れます。

  • 棄却:約70〜75%
    • 229件中169件以上が「棄却」となっており、圧倒的多数を占めます。
    • 請求人の鑑定評価は「合理性を欠く」「不的確である」として退けられ、財産評価基本通達に基づく原処分が維持されるケースがほとんどです。
  • 一部取消し:約20〜25%
    • 47件程度が該当します。
    • ただし、後述するように「一部取消し=鑑定評価が認められた」とは限らない点に注意が必要です。
  • 全部取消し:約5%
    • わずか10件程度に限られます。

1-2. 鑑定評価が「そのまま」認められる確率

裁決要旨を詳細に分析すると、請求人の鑑定評価がそのまま「時価」として採用され、認容に至るケースは極めて稀(数%程度)です。

  • 請求人の鑑定が採用された稀な例:
    • 鑑定評価に「不相当と認められる要素はない」とされ、帳簿価額よりも時価を反映していると認められたケース(平090116)。
    • 「原処分庁の主張よりもむしろ請求人の主張に合理性がある」と判断されたケース(平130089)。
  • 「取消し」であっても鑑定が否定されるケース(多数):
    • 一部取消しや全部取消しの多くは、請求人の鑑定も原処分庁の評価も「いずれも採用し難い」と判断されています。その場合、審判所が自ら調査・算定した価額(あるいは審判所が依頼した鑑定額)に基づき、結果として原処分額を下回ったために取り消されるというプロセスを辿っています。

1-3. 推測される傾向と結論

以上のデータから、鑑定評価による主張が通る確率は以下のように推測されます。

  1. 鑑定評価が「時価」としてそのまま100%認められる確率:
    • 5%程度
    • 鑑定評価基準に完璧に準拠し、かつ通達評価が著しく不適当であることを完全に立証できた場合に限られます。
  2. 何らかの形で減額(一部取消し以上)が勝ち取れる確率:
    • 25%程度
    • ただし、これは請求人の鑑定が正しかったからではなく、審判所が独自の調査で「原処分はやはり高い」と判断した場合を含みます。
  3. 認められない(棄却)確率:
    • 70%以上
    • 審判所は「通達による評価は原則として合理的という立場を強く持っており、鑑定評価に一つでも不備(事例選定の誤り、補正根拠の不明確さ、公示価格との乖離など)があれば、即座に「採用できない」と判断する傾向があります。

まとめると、鑑定評価を提出しても、その内容が「客観的交換価値を適正に評価したものである」と審判所に確信させるハードルは非常に高く、4件に3件は門前払い(棄却)に近い結果となっているのが実態と言えます。

2.鑑定評価が認められない主な理由

鑑定評価が「合理性を欠く」「不的確である」として採用されない理由には、以下のような共通点があります。

2-1.取引事例の選定・比較の不適切さ

最も頻繁に見られる理由です。

  • 不適切な事例の採用: 対象地と用途地域、地域性、画地規模が大きく異なる事例を採用している。
  • 検証の不能: 鑑定評価で採用した取引事例の所在地が明らかにされておらず、審判所がその適否を検証できない。
  • 補正の不備: 事情補正(売り急ぎ等)や時点修正が行われていない、または補正率の根拠が不明確である。

2-2.公示価格との規準の欠如

地価公示法に基づき、都市計画区域内の土地の鑑定評価では公示価格を規準とする必要がありますが、これを行っていないケースです。また、公示価格を採用していても、比較検討が不十分であると指摘されることもあります。

2-3.評価手法の適用誤り・合理性の欠如

  • 開発法の問題: 想定した開発道路の配置や区画割が行政の基準を満たしていない、あるいは造成費の算定根拠が不明確である。
  • 収益還元法の問題: 期待利回り(還元利回り)や純収益の算定に客観的根拠がなく、恣意的であると判断される。
  • 手法の偏り: 取引事例比較法や収益還元法など複数の手法を併用せず、特定の手法のみに基づいている(例:収益価格のみ、または開発法のみを採用)。

2-4.前提条件の誤認

  • 現況の無視: 相続開始時の現況に応じた評価が必要であるにもかかわらず、取り壊しや更地化を前提とするなど、不自然な想定に基づいている。
  • 利用権の誤評価: 親族間の使用借権に経済的価値を認めて10%の減価を行うなど、法的に認められない減価を行っている。

3.「通達評価」という壁を突破するには?

審判所の基本的なスタンスは、「財産評価基本通達による評価は、原則として合理的である」というものです。

鑑定評価を認めさせるためには、単に通達より安いというだけでなく、その土地の個別性が強すぎて、通達を画一的に適用することが著しく不適当であるという「特別な事情」を、立証しなければなりません

4.まとめ:鑑定評価を有効活用するために

裁決事例から学べる教訓は、「鑑定評価を出せば安くなる」という安易な考えは危険だということです。

  • 不動産鑑定評価基準に厳格に準拠しているか
  • 取引事例の選定に恣意性(自分に都合の良いデータ選び)はないか
  • 公示価格や土地価格比準表との整合性は取れているか

これらを完璧にクリアした鑑定評価書であって、初めて土俵に乗ることができます。鑑定評価を検討する際は、資産税に強い税理士や、裁決事例の傾向を熟知した不動産鑑定士との連携が不可欠です。