【高確率の宅建業法違反】不動産エージェントのビジネスモデルはブラック寄りのチャコールグレー

ー法的リスクを分析&独自解説ー

タイトルから横文字ばかりで大変申し訳ありませんが、ここ数年、「フリーランス」「ノマドワーク」「クラウドソーシング」「ワークシェアリング」「ギグワーク」「インディペンデントコントラクター」など、片仮名ビジネス語彙力が追いつかないほどの新しい働き方が注目を集めていることと思います。

それは、不動産業界でも例外ではなく
不動産エージェント
週末(副業)宅建士(片仮名ではありませんが)
というワードを見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか?

SNS(X、Instagram、Youtube、TikTok、Facebook)では、
エージェント登録だけで副業可能!」「免許不要で紹介料がもらえる!」「フルリモート!」「経験歓迎、資格経験不要!」「自由な働き方!」などと謳った、新興系不動産会社によるエージェントの募集広告も見受けられますが、これらの多くが厳密には、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)スレスレ、、、

いや、語弊を恐れずに言えば宅建業法に抵触している可能性が極めて高いのではないかと筆者は判断しています。

この記事では、宅建業法上の定義や過去の判例等を確認しながら、(注)上記のような不動産エージェントビジネスが違法となる法的リスクを整理します。

(注)

ここで”上記のような~“と限定した理由は、アメリカ式の不動産取引のスキームで登場するようなエージェント(※個人全員がライセンス必須兼個人事業主)不動産取引の”代理行為”を行う者のみが、本来的な意味での「不動産エージェント」であると考えているからです。

(余談ですが、ホリエモンって昔はすごい人なのかなと思ってたんですけど、大きな勝負所では負けまくってるし、最近は客寄せパンダ的なイメージしかないんですよね、、、変な企業案件の広告・動画とかも多いですし、、、)

宅建業法:免許が必要な行為

(用語の定義)

第2条第2項 宅地建物取引業

宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。

また、「業として行う」とは、社会通念上、事業として行っていると認められる程度の取引を指し、その判断は、以下の5つを主な参考要因として総合的に判断されます。(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

取引の対象者広く一般の者を対象にするか?
取引の目的利益を目的とするか?
取引対象物件の取得経緯転売を目的とするか?
取引の態様:自分で購入者を募り、一般消費者に直接販売するか?
取引の反復継続性反復継続的に取引するか?

すなわち、自身で不動産を仕入れて転売することはもちろん、「不特定者(一般の者)」に「反復継続」して「利益を得る目的」で、売買・交換・賃貸の「代理」や「媒介(仲介)」を行う場合は、国土交通大臣or都道府県知事の免許が必須です(※個人事業主であろうが法人であろうが)。
そして、この「媒介(仲介)」には、単に重要事項説明書や契約書に記名・押印することのみにとどまらず、契約成立のためにあっせん尽力するすべての事実行為(募集・勧誘行為等)を指すものと解されています(※後述の判例(東京高裁H19.2.14))

仲介営業マンと不動産エージェントの比較

仲介営業マン不動産エージェント
働き方雇用業務委託
(宅建業免許有会社と契約
多くは個人事業主)
報酬体系固定給+歩合級完全歩合
報酬率仲介手数料の数%〜10%程度仲介手数料の50%〜90%程度
ノルマありなし
出社義務・自由度あり・規則&指示&監督なし・自由裁量

そして、ここで問題になってくるのが、「不動産エージェントって、免許をおろしてなければ、ただの無免許ブローカーでは?」という点です。

いやいや、見込客を紹介してもらって紹介料としてエージェントに支払ってるだけだから問題ないよ」と言うお声も聞こえてきそうですが、本当にエージェントから委託元への見込客情報の紹介だけのやりとりでしょうか?(多くの委託元の不動産会社は、物件紹介や案内時には契約処理までをエージェントにしてもらっています。SNS上でも、業者免許を掲げていない個人が、「不動産の公正競争規約」に基づかないで物件紹介&勧誘を行っていたりします(業者免許があっても遵守できていない事業者も多いですが)。

また、「専任の宅建士要件も充足しているから~」と言っている人も見受けられますが、この場合に本来必要なのは、「専任の宅建士要件」というよりもエージェント自体の「宅建業免許」だと考えられます。

【求人募集の広告サンプル】

根拠①グレーゾーン解消制度(セーフラインは見込客情報の紹介まで)

物件情報の紹介までだけであれば売買契約などの宅建業免許が必要な業務を委託することによってその取引において違法性はないと経済産業省も認可しているため宅建業免許がなかったとしても問題なく取引を行う事ができます。
と、ある会社は説明していますが、読み間違えてないでしょうか?
グレーゾーン解消制度一覧の該当するであろう回答事例には、正しくは下記のように書かれています。

今般、事業者より、不動産の売買や賃貸借を検討している顧客の情報を、同意を得て不動産業者に提供し、顧客が希望する場合には両者の初回面談に同席し、売買契約が成立した際には不動産業者から手数料を収受する行為が、宅地建物取引業法第 2 条第 2 号の「宅地建物取引業」に該当するか否か照会がありました。

関係省庁が検討を行った結果、照会のあった事業においては、物件の説明、契約成立に向けた取引条件の交渉・調整の行為は、顧客と不動産業者との間で直接行い、事業者は一切関与しないことから「宅地建物取引業」には該当しない旨の回答を行いました。

※すなわち、事業者側(エージェント側と読み替えてください)から見込顧客情報を不動産会社に提供するだけならOKですが、逆に、物件情報の説明(広告・紹介・案内)や契約成立に向けた取引条件等の調整行為・関与は一切できず、NGなはずです。

(参考)

平成28年12月27日
一般事業者が不動産業者から顧客紹介料を継続的に受領することの違法性の有無。

根拠②【東京高裁 平成19年2月14日

登場者概要役割分担違法性の有無
Y1(企業組合)地元住民が作った、宅建業の免許を持たない組織広告・集客、入居希望者の受付、案内、部屋の決定の連絡 。 募集・勧誘等の事実行為無免許営業にあたる
Y2(宅建業者)Y1の組合員が経営する宅建業の免許を持つ法人 Y1から連絡を受けて書類を送付 。 形式的に重要事項説明書や契約書の名義人となる 。名義貸しにあたる

【判決の要旨】

1. Y1の行為:無免許営業(免許なしで仲介業務を行った)

  • 「媒介(仲介)」とは:「契約を成立させるためにあっせん尽力するすべての事実行為を指称し…単に当事者間に契約を成立させることにとどまらず、契約成立に向けての賃借人等の募集、勧誘行為等は当然これに含まれる
  • Y1の一連の行為は、賃貸借契約を成立させるためにあっせん尽力する行為であり、「媒介」にあたるのは明らか 。
  • Y1は、無免許でありながら、賃貸借に不可欠な重要な部分を自らの事業として営んでいたと認定 。
  • 賃貸借契約に関する仲介手数料報酬の6割(60%)をY2(宅建業者)から取得(利益の分配)していたことも、この認定を裏付けた 。

2. Y2らの行為:名義貸し(免許名義を無免許のY1に貸した)

  • Y2らは、Y1が無免許で営業している事情を知りながら 、Y1の仲介で既に契約を希望する人に対し、媒介者をY2らとする名義の書類を提供した 。
  • これは、免許を受けた者がその免許名義を他人に貸与する行為である「無免許営業幇助」「名義貸し」にあたると認定されました 。

根拠③【名古屋高裁平成23年1月21日

従業員証明書を発行・交付してるから大丈夫ですよ~」については、当該判例で明確に否定されています。

(一部抜粋)

Xは、平成16年8月1日、Yとの間で、①~③のとおりの合意をした上、Yの名義を使用して宅建取引業務を行うことになり、Yから従業者証明書の交付を受けた。
①Yは、Xを、Yの従業者として登録する。
②Xは、Yの名義と暖簾を使用して宅建取引業務を行う。
③営業利益の配分率をX80%、Y20%と定める。ただし、所要経費はXの負担とする。

しかし、Xは月に4、5日程度Yに出社して1時間程度滞在するものの、その宅建取引業務についての指示を受けたり、その方針や計画に従って業務を遂行するという関係にはなく、また、Yから給与の支給を受けたり、Yにおいて社会保険に加入することもなく、その業務の実態は、Yの業務とは独立したX自身の判断と営業行為による業務というべきものであった。

XはYの従業員としての形式をとって宅建取引業務を行っていたとはいえ、Yの指揮命令を一切受けることなく、自己の判断と計算により独立して不動産業を営んでいたというべきであって、実質的にYとは別個の事業者であったのであり、ただ自らは宅建取引業の免許を有していなかったことから、宅建取引業を営むための方便として免許を有するYの名義を使用し、Yはこれを許諾して、その対価として利益分配金の支払を受けるという関係にあったにすぎないことが明らかである。
したがって、XとYとの間の上記合意は、宅建業法13条が禁止する名義貸しを内容とするものにほかならないというべきである。

根拠 ④【最高裁令和3年6月29日

1. 宅建業法の規制と違反行為

  • 無免許営業の禁止: 宅建業法は宅地建物取引業を営む者に免許制度を採用しており、免許を受けない者が宅地建物取引業を営むことを禁止しています(同法12条1項) 。
  • 名義貸しの禁止: 宅建業者は、自己の名義をもって他人に宅地建物取引業を営ませることを禁止されています(同法13条1項) 。
  • 刑事罰: これらの違反行為(12条1項、13条1項違反)については、刑事罰が定められています(同法79条2号、3号) 。

79条 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 不正の手段によつて第3条第1項の免許を受けた者

 第12条第1項の規定に違反した者

 第13条第1項の規定に違反して他人に宅地建物取引業を営ませた者

 第65条第2項又は第4項の規定による業務の停止の命令に違反して業務を営んだ者

2. 令和3年判決の判断枠組み(公序良俗による無効)

  • 判旨: 令和3年判決は、以下の通り判示しました。「宅建業者が無免許者にその名義を貸し、無免許者が当該名義を用いて宅地建物取引業を営む行為は、同法12条1項及び13条1項に違反し、同法の採用する免許制度を潜脱するものであって、反社会性の強いものというべきである 。」
  • 名義貸し合意の効力:
    • 無免許者が宅地建物取引業を営むために宅建業者との間でするその名義を借りる旨の合意は、宅建業法12条1項および13条1項の趣旨に反し、公序良俗(民法90条)に反するものであり、無効であると判断されました 。
    • これは、名義貸し合意の私法上の効力を否定する根拠を公序良俗違反であると明確化した初めての最高裁判決であり、実務面・理論面双方で重要な意義があります 。

根拠?⑤従業者証明書

宅地建物取引業法施行規則で定められている従業者証明書の様式に関する規定は、「雇用」という言葉を用いており、限定的に解釈すれば業務委託契約に基づく受託者(個人事業主等)は本来の法律趣旨・想定から外れているように見えます。

しかしながら、上記のような不動産エージェントを募集しているような会社では、「従業者」の範囲を、雇用契約の有無にかかわらず宅建業者の業務に従事する実態のある者、すなわち業務受託者も含めてもいいんじゃね?と解釈しているようです。

しかし、「業務委託契約」は本来契約を結ぶ「発注者(委託者)」と「受注者(受託者)」は、法的に対等な関係にあるはずです。指揮命令関係はなく雇用契約のような主従関係は発生しません。上記の根拠③のように「業務についての指示を受けたり、その方針や計画に従って業務を遂行するという関係にはなく…給与の支給を受けたり、…社会保険に加入することもなく、その業務の実態は、Yの業務とは独立したX自身の判断と営業行為による業務というべき」とあるように、受託者は、委託者とは独立した別個の事業者と見るべきでです。
逆に、指揮命令系統が有る、すなわち宅建業者側の管理の下、エージェントが宅建業務に従事しているということを理由に「従業者証明書」を発行している!という理屈でいくのであれば、今度は労働法分野が問題になり偽装請負(偽装フリーランス)に該当する可能性が極めて高くなるでしょう。

まとめ

したがって上記で示したとおり、一つの不動産仲介成立を目的に各々が一連の業務に従事する場合、一方の宅建業免許だけで媒介を可とするのは、宅建業法が事業者の不正防止消費者保護を目的とした、「免許制」を採用していることの制度趣旨に反しているのではないでしょうか。

不動産エージェント型の働き方は、時代の流れも相俟って自由で柔軟な営業スタイルを売りにしている一方、法律の規定や制度趣旨の解釈が曖昧なまま、なんとなく拡大している傾向がありますが、上記判例等を踏まえると、巷の不動産エージェントビジネスは宅建業法上の「無免許営業」や「名義貸し」に抵触している可能性が極めて高いと考えています(個人的には、宅建業免許をおろしていない事業者は「不動産エージェント」自体名乗るべきでなく、物件説明すらしてはいけないはずなので「見込顧客紹介人」「見込顧客情報提供者」に改名した上で、やっていいこととやるべきではないことを再認識された方がいいのではと思います)。

ただ、上記の刑罰は国土交通省管轄の取締法規で、大きなトラブルや問題が起こらない限り、行政側も積極的に摘発するような状況ではないのが現状です。
「ブラック寄りのチャコールグレー」と題したのは右のような理由からです。


しかし、SNSやインターネット広告での「免許不要で稼げる」「宅建士じゃなくてもいい」といった情報を鵜呑みにせず、宅建業法の条文や制度趣旨を正しく理解することが、不動産取引に携わる者の本来やるべき最初の一歩です。

不動産取引は国民の財産権に直結し、人生の結構なウェイトを占める公共性の高い業務です。
一人ひとりの法令遵守・コンプライアンス意識が、業界全体の信頼性を支えることにつながることを意識した方がよいでしょう。